意思決定・ビジネス知能関連手法

この節の内容

人工知能(AI)|OR・経営科学| 期待効用・イズ| 意思決定分析| 階層化意思決定(HP)・多目的意思決定|エキスパートシステム|ファジィ理論|遺伝アルゴリズム(GA)|ニューラルネットワーク|決定木|意思決支援(DSS)| オンライン析過程(OLAP)| データマイニイングウェアハウス| ビジネス知能

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人工知能

 人工知能(AI)による知的問題解決の研究は1970年代にはエキスパートシステムの産業化に実を結んだが、1980年代以降、データからの帰納を機械化するさまざまな計算機学習理論のうち、比較的応用が容易な遺伝アルゴリズム(GA)、ニューラルネットワーク(NN)、決定木帰納(TI)が、1990年代に入るとビジネスデータの分析や意思決定支援に積極的に応用され始めている。また今日これらの手法を活用した計算機シミュレーションによる社会のモデル分析は、複雑適応系(ないし単に複雑系)と呼ばれている。ちなみに人工知能システムは、離散的−連続的な状態を持ち、目標追及する動的システムとみなせることは、最適制御・数理計画の開拓者故ベルマンも指摘していた。

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OR・経営科学

 第2次大戦後に開花したオペレーションズリサーチ(OR)、経営科学(マネジメントサイエンス;MS)ないし経営工学と呼ばれる分野は、決定分析、数理計画、統計分析、ダイナミカルシステム、最適制御といった数学とコンピューターによる数値的解法によって、現実社会の政策的応用に取り組むためのさまざまなテクノロジーを生んだ。経営科学は、意思決定者の限り有る合理性を補完するテクノロジーの研究する。またこのために処方的意思決定論ないし意思決定科学という別名を持ち、規範的意思決定論(期待効用理論、ゲーム理論、社会選択理論といった主に経済学に応用される合理的選択モデル)や、記述的意思決定論(実際の意思決定者の行動を説明・予測する理論と実証研究を行うための心理学ないし行動科学モデル)を統合して、明確な問題解決指向を持つ。ソルバー以外に表計算で使えるシミュレーション、意思決定分析用アドイン・ソフトウェアも複数市販されている。また待ち行列や数理計画法には、AweSim(SLAM)やLINDOなどの優れたPC用ソフトウェアがある。

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期待効用理論、主観的ベイズの方法

 企業活動は事業や金融商品に対する投資の効率性を問題にしており、安全資産と危険資産を最適に組合せるためのポートフォリオ理論や、ヘッジファンド問題で最近話題になった金融派生商品(デリバティブズ)の価格を予測する金融工学(ないし投資工学)が脚光を浴びている。 合理的ギャンブルの数学・確率モデルの研究は、実は数百年の歴史を持つが、今世紀半ばには不確実性下の合理的経済行動を説明する2つの標準的理論が確立された。一つは確率分布が客観的データとして得られる場合(すなわちリスク下の意思決定モデル)は、フォン・ノイマンとモルゲンシュタンの期待効用理論(EU)である。もう一つはサベッジが開発したより強力な理論で、確率データが無い場合(すなわち不確実性下のそれ)に使える。これが主観的確率と期待効用の理論(SEU)である。両理論は、それぞれの公理系(公理と呼ばれる少数の条件を正しいと仮定したもの)によって明記され、合理的な選好順序は、これらの公理と矛盾をきたさないふるまいを帰結する。また合理的な選好順序は、確率と期待効用(SEUの場合、効用と主観確率)によってその優劣が矛盾なく数値化できることが証明される。また公理系はそれに違反しない限り悪意の有るギャンブルによって巻き上げられること、つまり最終的に劣った資産を取って優れた資産を捨てる事態が起きないように保障されている(“Dutch Book Argumet”ないし”Making Book Against Self”と呼ばれる。)。この意味で(主観的)期待効用理論は、規範的意思決定の数学モデルである。またミクロ経済学だけでなく、ゲーム理論や意思決定分析の基礎として利用されている。

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意思決定分析(Decision Analysis)

 影響図(インフルエンス・ダイアグラム)と決定木(ディシジョン・トゥリー)および利得表はより現実的な意思決定者が合理的な政策・戦略・計画立案するための処方的ツールである。これらを期待効用理論とベイズの方法、動的計画法を組合せたものであるが、数式を直接用いる代わりに、野線図や木の形をした図的表示を意思決定者が問題構造を直観的に把握するのを助けるために用いる。つまり規範的理論としての期待効用理論は、合理的選択者のしたがうべき公理系を示すものの、どうやって最適な選択をすればよいかを教えるものではない。処方的意思決定論あるいは経営科学は、この種の“How to Solve“の問いに答えるための手法を開発した。最近のPC用意思決定分析ソフトウェアには、決定木、期待効用、後方帰納、ベイズ確率更新、感度分析、モンテカルロシミュレーション、マルコフ過程などを、ドローツールを使ったモデル作成と共に、分析メニューで選ぶことができる。例えばDATA、DPL、DecisionToolsSuite、CrystalBallといった市販ソフトウェアが意思決定分析やビジネス意思決定のテキストに紹介されている(Clemen, 1996;高橋、1996)。

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AHP・多目的意思決定

 決定木や期待効用に基く伝統的な意思決定分析は、選好や判断の合理性を仮定しているが、多次元的な評価がからんでくる。それを一つの基準にまとめあげていく作業に時間をかけることが必要となる場合もある。日本のビジネス慣行で「根回し」や「稟議」と呼ばれるものに当たる。1977年にSaaty教授が提唱したAHP(Analytic Hierarchy Process)は、社会統計では歴史がある一対比較を意思決定支援に応用したものである(刀根・真鍋、1990;藤田・熊田、1996)。特色は、多次元的評価尺度とそれらの間に生じる意思決定者の判断や選好の矛盾の扱いを明確にしたことである。また、それによってインタラクティブな意思決定やグループによる意思決定を支援するための基礎となる理論である。日本では階層化意思決定法として紹介されたが、現在ではインタフェースに特色のあるPC用ソフトウェアがいくつか市販されている。

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エキスパートシステム

 初期のエキスパートシステムは、1960年代の終わりに開発された医療診断システムMYCINや化学構造式特定システムDENDRALといった実験的システムが、やや一般化されてはいるがほぼそのままの仕組みで1970年代にさまざまな専門分野の知識ベースに適用された。また知識獲得やシステム開発のためのツールが整備されていった。この時代までの知識ベースは、IF-THEN文にしたがったルールの集まりとして扱われた。これはプロダクションシステムとかプロダクションルールシステム、あるいは単にルールベースシステムと呼ばれた。その後、1980年代までに知識獲得の際に人間の主観的な判断の曖昧性を扱うための信頼性係数、ファジィ理論、信念関数、及びルールに基く予測の成功失敗を客観化する為のベイズモデル、地理的・概念的に分散した異分野エキスパートシステムの協調技術である黒板システムや契約ネット等が研究、応用された。1980年代後半からは、AIではルール知識から機械学習に重点が移ったため、エキスパートシステム自体の研究は下火になった。また、プログラミング言語は多くの初期のAIシステムと同じく、はじめLISPが用いられたが、やがて論理プログラミング言語Prologやエキスパートシステムシェルと呼ばれる専用開発環境が用いられるようになった。現在ではPC用のソフトウェアも数多く存在するが、ビジネス知能への応用としては、対話型意思決定支援システムのモデル分析機能の一部として位置付けられ、オブジェクト指向データベース、関係データベース、多次元データベースなどと連動して、現実のデータを取り込みながらの分析機能が求められている(Turban and Aronson, 1998)。

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ファジィ理論

 Zadah教授が1965年に提唱したこの理論は、経営科学・人工知能の学問研究に留まらず、産業社会で幅広く実用化された(浅居、1992;萩原、1994)。専門家の高度な判断は、論理学に従って厳密に推論するデジタルコンピューターによって模倣することができる。初期のエキスパートシステムは、条件−結論の組からなるルール形式で人間の知識をコンピューター上で自動処理することに成功した。また専門家の主観的判断に特有の曖昧性は、確率や信頼係数、そしてファジィ理論によって数値化できる。ファジィ理論の数学的側面は、集合論の一般化であり、論理学や確率論を基礎の部分から修正する(水本、1988)。したがってファジィ理論は専門家の必ずしも確率モデルに従わない(つまり加法的でない)判断を、計算機で扱いやすい形式にモデル化する。また、言語の意味を数値化するので、専門家に直接あるいは間接にインタビューして知識獲得できるので便利である。

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遺伝アルゴリズム

 遺伝アルゴリズム(GA; Genetic Algorithm)は、生物進化の仕組みをヒントにしたものであり、ニューラルネットや決定木帰納アルゴリズムと並んで機械学習の一つの代表的手法である(デービス、1992)。GAは、解の集団から評価(適合度)の高いものを選び、その子孫を選択的に繁殖させることで、長期の世代交代の後に最適解を発見するという手法である。HollandはGAをルール型知識に基づくエキスパートシステムの脆弱性を克服するために、分類子システム(ルールベースシステムとニューラルネットの一般化)の学習メカニズムとして考案した。しかしデービスの教科書に紹介されているように、GAは、組合わせ最適化問題を含む幅広い現実的適用が可能であり、また文法学習に対する遺伝プログラミングや進化計算の考え方に繋がっていく(Davis,1990;Goldberg、1989)。最適化ツールとしてのGAはEvolver、Xpert Rule、Neularystのような近年のビジネス意思決定ソフトウェアにも組み込まれている。Holland自身は1970年代から、経済学的なエージェントモデル、帰納推論、および秩序形成のシミュレーションといった心理・社会・経済の領域にこの認知科学アプローチを適用するいわゆる複雑適応系を提唱してきた研究者でもある(Holland,1975;Hollandら、1986)。Kozaは文法学習などを含む複雑な遺伝子構造を進化させる遺伝的プログラミング(EP)を提案している。また人工生命(AL)を含めて、この分野を進化計算(EC)と呼ぶこともある。

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ニューラルネットワーク

  生物の脳の仕組みを真似た知能の仕組み。ルールベースシステムのような明示的な推論の経路とその探索を持たず、入出力の正しいペアを訓練データとして次々に与えると、ネットワーク状に結合された人工ニューロンがその入出力を正確に真似できるように自動的に自己調節する。より詳しく言えば、ネットワーク内で互いに結合した各ニューロンが、出力誤差の大きさと、学習パラメータの値にしたがって互いの結合強度を調節するようになっている。非線型課題の学習方式(誤差後方伝播)に難点があったが、1980年代に中間層に対応したデルタルールが開発されてからは、飛躍的にその適用領域が拡大した。推論経路を明示説明できないことや、精度を上げるために訓練時間を増やしたり、隠れ層ニューロンの数を増やすと、具体的な課題に特定的なネットワークになってしまうことなどの問題点もある。

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決定木帰納・KDD

 特定の概念、例えば椅子であるものと、椅子でないものとが混じったデータの集まりあるいは事例を与えて、それを正しく見分けるルールを学習することができるだろうか。概念学習ないし帰納学習(Inductive Learning)とはそうした類の問題であり、そのエレガントな解法はバージョン空間法(Mitchellによる)として知られる。決定木(Decision Tree)は、例えば□、■、○、◎、●、△の6つの事例データのうち、□、○、◎の4つが正例で、残りが負例とすると、この概念は「塗りつぶされていない。」が最も効率が良く正例と負例を見分ける属性である。しかし△には当てはまらないので、「もし塗りつぶされていないなら、上下対称である。」を第二の基準として付け加えると識別率が100%になる。この決定木帰納の厳密な定式化はエントロピー最大化原理にしたがって属性を選択するものであり、Hunt?のCLSとそれを受け継いだQuinlanのID3において最初にシステム化された。また類似の手法としてラフ集合論(Rough Set Theory)があるが、これは概念の上方集合と下方集合をとって挟み込む論法に基づいており、データ内のノイズに対しても頑健である。データマイニングの項でも述べたようにデータベースからの知識発見(KDD)の手法として、従来の多変量解析の他に、これらの人工知能手法や検索エージェント(ソフトウェアロボット)が応用される。

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意思決定支援システム(DSS)

 情報システムとしてのDSSはデータベース管理、モデル分析ツール群、対話的インタフェースの三部構成で論じられる。市販のPC向け意思決定ソフトウェアも、ほぼこの3パートに対応する機能を持っている。これらはGUI(Windows、Mac、Unixなど)を活用しており、プログラミング無しに反復的・対話的なモデル構築・保存・編集と、分析ツールの使用、結果のグラフ表示などが容易である。しかし、これらのツールを使いこなすための前提は、PCや情報技術の使用方法を熟知していることではない。これらのテクノロジーが個人や組織の合理性の限界を克服するための処方箋として、いかに役立ちううるのかといったことを常に考える力および問題解決の必要と意欲が不可欠である。そのためには、むしろ意思決定分析、多属性効用理論、ベイズルールなどの規範的意思決定モデルや、個人や組織の判断・選択に特有のさまざまな心理的−社会的に生じる認知バイアスの理論についても理解しておくべきであろう。

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OLAP

 表計算(SS)や意思決定支援システム(DSS)にビジネスデータベースから多次元データを取り込んで、さまざまな角度からビジネスの問題点や因果関係を分析することを、オンライン分析過程(OLAP)という。OLAPは関係データベースへの問い合わせ(Query)をプログラムするためのSQL等の知識を持たないエンドユーザーが、絵的に理解できる多次元データをこねくりまわしながら、ビジネスプロセスを立体的に(N次元データ超キューブとして)把握しようとする属人的プロセスを支援するための情報システムである(Thomsen,1997;Kimball,1996)。しかしドリルダウン、ドリルアクロス等と呼ばれるOLAP製品の多次元分析機能そのものは、SPSSなどの汎用統計パッケージから始まり、Excelなどのビジネス表計算ソフトに転用されて標準装備されたピボットテーブルやフィルターの機能に置き換えられるが、商用OLAPシステムを購入すれば逐次データベースを参照し、汎用統計ソフトや表計算などで解釈した結果を蓄積・再利用できるように工夫されたOLAP用情報システムを1から構築したり、利用者教育するための費用を大幅に節約できる。またOLAP用情報システムは、商取引や店舗内参照される情報システム内データベーストランザクションシステム(OLTP)の負荷分散のために、OLAPサーバーを別個に立ち上げることが推奨されている。

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データマイニングとデータウェアハウス

 多次元データベースや関係データベースを中心に情報システムを構築した企業には、膨大なデータの山が未利用資源として蓄積されることになる。データマイニングは膨大なデータの山から自分の代わりに人工知能エージェント(検索ロボット)に情報を探索・発見させるための一連のソフトウェアないし情報システムである。また知識の自動発見のための手法としては決定木帰納、ニューラルネット、遺伝アルゴリズム、多変量解析などが用いられる。OLAPシステムと合わせてKDD(データベースからの知識発見)ないしデータウェアハウスとも呼ばれている(Westphal and Blaxton, 1998; Dhar and Stein, 1997; Bigus, 1996;豊島・木村、1997)。

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ビジネス知能

 ビジネス知能(Business Intelligence)は情報システムの新しい潮流として注目されている。OLAP、DSS、データマイニング、高度化されたスケジューリング(ASP)と計画といったビジネス知能システムでは、最適化と予測の経営科学手法、人工知能の比較的新しい手法、例えば帰納学習、ニューラルネット、遺伝アルゴリズムなどがビジネス意思決定者の作業を知能化するのに役立っている。 

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文献(和書)

浅居喜代治 編著.『ファジィ経営科学入門』.オーム社.1992.

 ファジィ理論を中心に、経営科学の諸分野への不確実性モデルの理論と応用を紹介している。

石井直宏・塚田 稔 著.『ニューラル・コンピューティング:理論と実際』.森北出版.1989.

 さまざまなタイプのニューラルネットの原理をかいつまんで説明している。

飯島淳一 著.『意思決定支援システムとエキスパートシステム』.日科技連.1993.

 ビジネス情報システムの一部として、意思決定支援システムやエキスパートシステムのしくみを、実際のプログラミング例を交えて説明している。

魚田勝臣・小碇暉雄 著.『データベース』.日科技連.1993.

 情報システムの中心技術である、関係データベース、SQL 、DBMSなどについてきちんと勉強したい人のための入門書。

高橋三雄 著.『ビジネス情報技術』.日科技連.1996.

 ビジネス意思決定に必要な予測・最適化・シミュレーションのための表計算や、市販のPC用意思決定ソフトウェアを分かり易く紹介している。

戸田光彦・山口高平・新谷虎松 著.『知能化技術と意思決定支援システム』.コロナ社.1994.

 計測制御学会編集の本で、ルールベース、帰納学習、ニューラルネット、遺伝アルゴリズムなどがマイニングや意思決定支援システム(DSS)に応用される際の要素技術を紹介。

刀根 薫・真鍋龍太郎 編.『AHP事例集』.日科技連.1990.

 Saaty教授が1977年に提唱した階層化意思決定法AHPは、この本の著者らによって日本に紹介され、実践応用された。

豊島一政・木村 哲 著.『OLAP:実践データウェアハウス』.日本経営科学研究所.1997.

 近年注目されるビジネス知能の分野を紹介する本。多次元データベースに蓄積された膨大なビジネスデータを人手で分析していくときのOLAP(オンライン分析過程)と人工知能エージェント(検索ロボット)に有益な情報を探索・発見させるための一連の理論と情報システムをかいつまんで紹介している。

廣田 薫 編著.『知能工学概論』.昭晃堂.1996.

 マイニングや意思決定支援システム等のビジネス知能や複雑系シミュレーションに応用されるようになった、人工知能の比較的新しい手法、例えば帰納学習、ニューラルネット、遺伝アルゴリズムなどを紹介している。

藤田 忠・熊田 聖 著.『意思決定科学』.泉文堂.1996.

 伝統的な経営科学手法である決定木分析、期待効用分析、PERT/CPM、動的計画、多目的計画法、ゲーム理論と、より最近のAHPやファジィ理論までを簡潔に紹介している。

水本 雅晴 著.『ファジィ理論とその応用』.サイエンス社.1988.

 教養として分かり易く書かれた本は少なくないが、この本はファジィ理論の数学的側面を基礎から丹念に説明しているのでしっかり勉強したい人向きである。

森田道也 編著.『経営システムのモデリング学習』.牧野書店.1997.

 ITHINKないしStellaを使った在庫管理や企業経営モデルを紹介している。

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文献(洋書)

Adriaans, P. and D. Zantinge. [山本・梅村 訳.『データマイニング』.共立出版.1998.]

 データベース管理システムやエキスパートシステムの技術の延長にあるマイニングやOLAPにおける知識発見のための要素技術、例えばデータ視覚化、決定木学習、ニューラルネット、遺伝アルゴリズムなどを紹介している。また著者らによるSyllogic社における市場調査データ分析システム開発経験から、KDD環境設計の10の黄金則が提唱されている。

 

1.    巨大なデータへのアクセスと中間結果の保存が共に可能であること。
2.    学習の局面に応じて分類、知識工学、問題解決のためのツールが使い分けできること。
3.    分析履歴データが永続的に利用できるデータウェアハウスを構築すること。
4.    データの誤りや重複を取り去るためのデータ洗浄の技術を発展させること。
5.    データいじりに創意工夫を凝らすユーザーの作業をコード化して保存・再利用できるようにすること。
6.    意思決定システムと結合し、伝統的な分析手法から開始すること。
7.    新しい分析ツールへの拡張可能性を考えておくこと。
8.    均質でないデータベース、つまり思いがけない情報をいつでも利用できるように、どのようなタイプのデータベースとも接続できるようにしておくこと。
9.    サーバーとクライアントで処理負荷を分散させ、必要なら並列処理を可能にすること。
10.    データベースにアクセスしながら機械学習プログラムを軽快かつ柔軟に動かすためのキャッシュ最適化。

 

Bigus, J. P. "Data Mining with Neural Networks: Solving Business Problems from Application Development to Decision Support." McGraw-Hill.

 IBM社における著者の経験を踏まえて、マイニングやOLAPによる知的意思決定支援システムに応用される人工知能手法である帰納学習、ニューラルネット、遺伝アルゴリズムを紹介している。

Burnstein, D.(ed.) "The Digital MBA." Osborne McGraw-Hill. 1995.

 表計算やデータベースは軽快なビジネス意思決定のための日常的ツールとして有用だが、特定の問題解決・目標追求の用途向けになっていないところにその限界が認められる。本書では実用的な意思決定支援に利用できるソフトウェアをMBAウェアと呼び、以下に述べる多彩なビジネス意思決定向けPC用ソフトウェアとその適用事例を紹介している。Manage Pro(プロジェクト管理)、OSHALOG(安全管理)Negotiator Pro(交渉管理)、Idea Generator Plus(発想支援;CAT)、Business Insight、Product Planning Advisor(戦略計画エキスパートシステム)、Destiny(資産評価・財務分析)、DPL(決定分析)、ITHINK、Extend+BPR(ビジネスプロセスシミュレーション、TQC)、@RISK(リスク分析)、ForecastPro、SmartForecast(予測)。これらのデモ版とサンプルデータは付録CD-ROMに採録されている。

Clemen, R. J. “Making Hard Decision: An Introduction to Decision Analysis.”  Second Edition. Duxbury Press. 1996.

 最近のPC用意思決定ソフトウェアDATA、CrystalBall、Excel、DPL、@RISK、BestFitを駆使した意思決定分析のユニークなテキスト。

Dhar, V. and R. Stein. "Seven Methods for Transforming Corporate Data into Business Intelligence." Prentice Hall. 1997.

 OLAP、DSS、データマイニングなどビジネス情報システムの知能化の観点から、人工知能の比較的新しい手法、例えば帰納学習、ニューラルネット、遺伝アルゴリズム、ファジィ理論、類推・事例推論などを要素技術として紹介している。

Davis, L. "Handbook of Genetic Algorithms." Van Nostrand Reinhold. 1990.[嘉数侑昇ら訳.『遺伝アルゴリズム・ハンドブック』.森北出版.1994.]

 遺伝アルゴリズムの基礎理論と応用を紹介する論文集。ニューラルネットとの併用なども紹介されている。

Holland, J. H., K. J. Holyoak, R.E. Nisbett and P. R. Thagard. "Induction: Processes of Inference, Learning, and Discovery." MIT Press. 1986.[市川伸一ら訳.『インダクション』.新曜社.1991.]

 分類子システムと遺伝アルゴリズムの提唱者J.ホランド博士を含む気鋭の認知科学研究者たちの共著であり、帰納推論や類推という古くから論じられた哲学的・学際的問題に対し、情報処理アプローチでもって挑んでいる。

Kamlesh, M. "Management Science: The Art of Decision Making." Prentice-Hall. 1994.

 表計算Excelで使用する意思決定分析ソフト@RISK(DecisionToolsSuiteの一部)や数理計画パッケージLINDOを使用したOR・経営科学のテキスト。

Kimball, R. “The Data Warehouse Toolkit: Practical Techniques for Building Dimensional Data Warehouse.” 1996.

 データウェアハウスの要は多次元データベースあるいは関係データベースからのOLAPとマイニングである。この本ではOLAPツールとそれに関連するDBMSとDSS関連技術に焦点が当てられている。財務分析、営業販売、運輸、建築等の実務応用が詳しく紹介されている。例題データはMS Accessのファイルとして、著者のホームページで無償配布されているVisual BasicアプリケーションソフトウェアStar Trackerと共に付録CD-ROMに収められている。

Kirkwood, C. W. "Strategic Decision Making: Multiobjective Decision Analysis with Spreadsheets." Wadworth Publishing Company. 1997.

 現実の意思決定では、予め一つの尺度(期待効用)で評価できる単純なギャンブルというより、互いに関連する評価や目的の落し所を探る必要がある。表計算Excelの自作シートを使用しながら、不確実性の下での意思決定や多目標意思決定の分析手法を紹介するテキスト。またコーステキストとして使う場合の教師用ガイドも別売されている。Kirkwood先生のwwwホームページも開設されている。

McCarthy, E. "The Financial Advisor's Analytical Toolbox: Using Technology to Optimize Client Solutions." McGraw-Hill. 1998.

 エキスパートシステム構築ツールXpertRuleや、ニューラルネット開発ツールBrainMaker、表計算アドインのリスク分析ソフト@RISK等を駆使した、財務分析・投資意思決定への応用を紹介している。

Rangsdale, C. T. "Spreadsheet Modeling and Decision Analysis: A Practical Introduction to Management Science." Second Edition. South-Western College Publishing. 1998.

 表計算Excelの自作シートを使用しながら意思決定分析手法とを紹介するテキスト。

Russell, S. and P. Norvig (1995). “Artificial intelligence: A modern approach.” Prentice Hall. [古川康一(監訳).『エージェントアプローチ人工知能』.共立出版.1997.]

 人工知能と経営科学・不確実性下の経済行動の融合が図られている。論理学と記号処理に基礎を多く伝統的な人工知能手法を紹介しながら、意思決定分析手法に基く人工的意思決定者(エージェント)の形式モデルと信念ネットワークによる計算化を中心に紹介したユニークなテキスト。

Sage, A. P. "Decision Support Systems Engineering." John Wiley & Sons. 1991. [三森定道・明石吉三 訳.『認知心理学的アプローチによるDSS』.日刊工業新聞社.1993.]

 情報システムとしてのDSSはデータベース管理、モデル分析ツール群、対話的インタフェースの三部構成で論じられる。このSageの本もほぼこの3パートに対応する内容を持つ。また意思決定分析、多属性効用理論、ベイズルールなどの規範的意思決定モデルだけでなく、個人や組織の判断・選択に特有のさまざまな心理的−社会的バイアスの研究についても紹介している点で、包括的な入門書といえる。

Schleifer, A. and D. E. Bell. "Data Analysis, Regression, and Forecasting." Course Technology, Inc. 1995.

 表計算Excelのアドインとして使用する意思決定分析ツール(DecisionToolsSuite)を使用したビジネスデータの予測や分析の技法をシート例題によって説明する。

Thomsen, E. "OLAP Solutions: Building Multidimensional Information Systems." John Wiley & Sons. 1997.

 多次元データベースにアクセスする表計算ソフトMS Excelのビジネスユーザーを念頭において、ハイパーキューブと呼ばれる多次元データの分析概念やTM/1、Diamond(IBMが開発しSPSSが販売)といった商用OLAPツールの使用例が紹介されている。これらのサンプルデータとソフトウェアはベンダー一覧と共にCD-ROMに付録されている。

Turban, E. and J. E. Aronson. "Decision Support Systems and Intelligent Systems." Fifth Edition. Duxbury Press. 1998.

 意思決定支援システム(DSS)の体系的教科書。新しい版ではエキスパートシステム他人工知能のビジネス応用についての章が増えた。

Xiaohui, L., P. Cohen and M. Berthold.(eds.) "Advances in Intelligent Data Analysis: Reasoning about Data." Lecture Notes in Computer Science 1280. Springer. 1997.

 データベース技術や経営科学・人工知能手法を融合し、エンドユーザーによる知的データ分析を支援するための新しい情報システムを研究するこの分野の国際会議IDA−97は1997秋にロンドン大学 Birbeck Collegeで開催された。この本はそのときの予稿集をリプリントしたもの。

Westphal, C. and T. Blaxton. "Data Mining Solutions: Methods and Tools for Solving Real-World Problems." John Wlley & Sons. 1998.

 データマイニングの手法、特に多次元データの視覚化技法とそのソフトウェア(SPSS Diammondを含めた16種類)を紹介している。またビジネス各分野への適用事例が充実している。

Winston, W. L. "Simulation Modeling using @RISK." Duxbury Press. 1996.

 表計算のアドインで使用する意思決定分析ソフト@RISK(Decision Tools Suiteの一部)を使用してOR・経営科学手法を紹介するテキスト。

Winston, W. L., S. C. Albright and M. Broadie. "Practical Management Science: Spreadsheet modeling and applications." Wadworth Publishing Company. 1997.

 表計算のアドインで使用する意思決定分析ソフトや、数理計画法の定番パッケージソフトを駆使して、OR・経営科学の手法を教えるテキスト。版を改め、新たに事例分析を行った第3著者も執筆陣に加えて内容を充実させた。

Wolstenholme, E. F., S. Henderson and A. Gavine. "The Evaluation of Manaagement Information Systems." John Wiley & Sons. 1993.

 この本の一部で、Stella(ITHINK)を利用した経営情報システムのシミュレーション・モデルの分析が紹介されている。

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ウェッブURL

 Aptech社(Gauss CML) http://www.sxst.it/apt__gap.htm

 Palisade社  http://www.palisade.com/

 TreeAge社    http://www.treeage.com/

 Kirkwood教授  http://www.public.asu.edu/~kirkwood/SDMBook/

 Clemen教授  http://www.duke.edu/~clemen/mhdnet.htm

 判断・意思決定・経営の国際学会(SJDM) http://www.sjdm.org/

 OR・経営科学研究所(INFORM) http://www.informs.org/

 

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